観察について

だらだら書く。観察という構造と振る舞いは少なくとも、観察者と観察対象、そして観察するという行為で構成される。
デカルト的発想では、観察は、観察者と観察対象が分離され客観的であることが重視される。それとは逆に、観察者が観察対象に積極的に関与する主観性を重視する理論もある。

レオナルド・ダ・ビンチ

レオナルド・ダ・ビンチは、膨大な量のスケッチを残している。観察対象は、自然から人体など幅広い。なぜここまで観察に没頭できるかは、かなり謎である。

物理学:ケプラーの法則の例。

観察対象である天体を観察しつづけて、その運動の法則を論理的な数式モデルで表す。ものごとの本質(現実世界から数式モデルを引き出す)を見つける事はモデラーの醍醐味であろう。観察者と観察対象が分離し、客観性を求める思考様式の好例であろう。

物理学:量子力学の例

これは、客観性の限界にぶつかった例。観察対象を観察するために「光」が必要となるが、その光が観察対象に影響をあたえてしまうため、光が当たる前の観察が出来ないというストーリ。観測という行為が観測対象に影響を及ぼしている。この話はとても好き。ここから、物理学と哲学の境界がわからなくなることがある。

生物から見た世界

生物から見た世界 (岩波文庫)

生物から見た世界 (岩波文庫)

この本の面白い視点は、(人:観察者)が(生物:観察対象)を観察するのではなく、犬など(生物:観察者)の視点に立って(世界:観察対象)を観察するとどのように見えるかについて語っている。

簡単にこの本をまとめると「蜂が見る世界と人が見る世界は異なるよ」さらには、「物理学者が見る世界と普通の人が見る世界は異なるよ」ということ。

観察者の視点を観察対象にしたこと、客観的な世界という存在に懐疑的な意見を呈示したこの本はかなりユニークである。

ホーソン実験:マネジメント

光の明るさなど作業環境と生産性の相関関係を調べていたが、相関関係が見つからなかった。代わりに作業者は観察されるという行為自体が生産性に影響を及ぼすことが発見された。これがホーソン実験の大筋。これを起点に、ハーズバーグの人間関係論などモチベーション系の理論が発展して行った。(また別の観点では、観察という行為自体が客観性を失わす要因になるので実験の際は、観察には、注意を払う必要があるという教訓を残した)

自己内省:リーダシップ

リーダーシップの本を読むと、自己内省がよく出てくる。内省は、観察者は自分で、観察対象も自分である。観察対象の呼び名はコンピテンシー、メンタルモデル、マインドセットなど色々ある。自分が情熱を傾けられる要素を自覚する能力が内省のスキルの一例。

センスメイキング(状況認識):学習する組織

センスメイキングは、過去をふりかえって意味付けを行い、未来の行動につなげる行為を指す。過去をふりかえることで、自己のメンタルモデルを継続的にアップデートをかけ、メンタルモデルを元にした実際の言動をもって、積極的に自分の周りに関与する。その結果をうけて、またふりかえりをして...
観察者と観察対象は相互的なインタラクションの関係である。

ダイアローグ:学習する組織

ダイアローグの構造と振る舞いは、聞き手が観察者、話し手のメンタルモデルが観察対象が基本であるが、聞き手が観察者で、聞き手自身のメンタルモデルが観察対象となるし、話し手が観察者で話し手自身のメンタルモデルが観察対象にもなる。
また、ダイアローグ中は、聞き手と話し手が入れ替わるし、センスメイキングとダイアローグは強い相関性がある。
その結果、観察者と観察対象の関係がぐるんぐるんにまざるようになっている。
ちなみに、ダイアローグを提案したのは物理学者である。何となく腑に落ちる。

マーケティング

観察対象は、顧客。顧客を知らずして事業やワークフローが定義できないと。最近、TDD系の発想を大枠まで広げると、ここまでたどり着くのではと妄想している。

デザイン

デザインとい言葉から、ステレオタイプ的に、自己主張の強い人がユニークでカラフルなデザインを描く人を連想することがある。しかしデザイン系の本読むと、レオナルド・ダ・ビンチのように徹底した観察を重視した論調のものがある。IDEOのデザインファーム会社の場合は、文化人類学アナロジーを使って観察の重要性を語っている。

開発者

開発者にとっての観察対象の軸は、いろいろある。要素技術の動向や運用中のシステムの挙動やシステム導入対象のドメイン等。開発チームや自分自身も観察対象になる。観察対象のバランスは肝要。私の場合、ついつい開発チームに目が行きがちだが、良いソフトウェアをつくるには、要素技術の動向や対象ドメインを見る事も忘れてはいけない。

対象ドメインを的確に理解するのに、OOAアプローチでは、ドメイン対象を観察したり、ヒヤリングしたりして、用語集の作成や、UMLなどの表記法を使ってモデリングを行う。UML本を読むとついつい、表記法や概念モデル<=>設計モデル<=>Javaマッピング関係に目が行ってしまうが、現実世界のドメイン対象を観察して理解することがモデリングの基本活動であることを忘れてはいけない。

BDDアプローチでは、実行可能なSpecの記述に注力する。