創造者
- 作者: J.L.ボルヘス,Jorge Luis Borges,鼓直
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2009/06/16
- メディア: 文庫
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ゲーデル、エッシャー、バッハのような構図は時折みえるのだが、全体では、なんと言えばいいのかわからない、晦渋な本。
かろうじて読み取れる、気に入った文章をいくつか
...
神が指し手を、指し手が駒を動かす。
神の背後にいかなる神がいて、塵と時間、
夢と苦悶のからくりを編みだしているのだろう?== 象棋 P104-105
....
さらに伝えらているところでは、その死の前であったか後であったか、彼は神の前に立っていることを知り、こう訴えた。「わたくしは、これまで空しく多くの人間を演じてきましたが、今や、だだ一人の人間、わたくし自身でありたいと思っております」。すると、つむじ巻く風のなかから神の御声が答えたという。「わたしもまた、わたしではない。シェイクスピアよ、お前がその作品を夢みたように、わたしも世界を夢みた。わたしの夢に現れるさまざまな形態のなかに、確かにお前もある。お前はわたしと同様、多くの人間でありながら何者でもないのだ」
== Everything and Nothing P80 - 81
...
宇宙を要約するという途方もない
もくろみを抱き、精魂を傾けて
高雅で晦渋な手稿をやまと積み、
推敲を重ねて最後の詩行に達した。
幸福に感謝を捧げようとして
ふと視線を上げると、空にかかる
磨かれた円板が眼に入り、月を
忘れていたことを知って動顛した。...
== 月 P116 - 117