パタン・ランゲージ

パタン・ランゲージ―環境設計の手引

パタン・ランゲージ―環境設計の手引

事前に 方法序説 (岩波文庫) を読んでから。なかのさんの言葉を思い出し、デカルトの思想のどこに、まったをかけて、何を明らかにしようとしたのかを読み取ろうと心がけて読んだ。


デカルトの思考様式の特徴は、次。
1.疑わしいものは排除する。
2. 大きなものを小さく分割する。
3. 単純なものから順番に複雑なものへと進む。
4. もれや誤りがないか再検討。


パタンランゲージが、特にデカルトの考えに待ったをかけたのは、2と1だ。アレグザンダーの活動を追ってみると、形の合成に関するノートの失敗から、おおきな転換を図っている。機能をツリー上に、明確に機能を分解し、明確に空間に分けて配置してしまうと、結果は、住みにくい。居心地の悪い町や家出来てしまう。どうしてだろう?という問題意識が、アレグザンダーの中で芽生えたのだろう。
それを考え抜いて、セミティラス構造(重なり合い)の話や、パタンランゲージへと向かっていった。 個々のパタンは、大中小や、道、門などの区分はあるものの、それら完全に独立して存在するのではなく、相互に浸透し合う関係にある。

アレグザンダーの後期の活動の、ネーチャ・オブ・オーダーでは、センターが重要な概念として出てくる。ここでも、センターは1つ独立して存在しているのではない。絨毯の模様のように、1つのセンターが強い存在感がありつつも、複数のセンターが重なり合い相互に浸透し合うことで全体が形成されていることがポイントとなる。


「何を」「分割」して考えることに待ったをかけたかのか?機能、空間の「分割」の他に、「客観(建築物の形)」「主観(住む人の情感)」の「分割」が上げられる。パタンランゲージの特徴として、形-情感が非常に密接な関係で記述してある点が上げられる。
これは、建築を物理空間や力学的な的観点から数学的記述を使って高度に精細化し、主観的要素を省略したアプローチと大きく異なる点である。
もし、パタン・ランゲージの本をお持ちであれば、何個かパタンが、どのように書かれているかを実際に自分の声を出して確かめてほしい。例えば、179. アルコーブ, 180. 窓のある場所,181.炉火。何かを感じるはずである。実際に読者が炉火とやり取りしている訳ではないのだが。

前述は、説明上、「形(客観)」-「情感(主観)」と言葉に区分けして記述したが、パタンランゲージが生成しようとしていること・ものを考える際は、主客の分離の考えを脇に置いておくと、理解が深まるのではと、筆者は考えている。


パタンランゲージが生成(維持)しようとしているのは、建築の形だけではなく、日常生活(身体的/心情的な動き)を生成(維持)しようとしていると把持したときパタンランゲージに関する視界が1つ開けた感じがする。ユーザの心と体の描画に特化すれば、身体論、心理学、認知学に近づき、形の描画に特化すれば、数学、物理学に近づくのだが、建築の専門フィールドは、本来その重なり合うところにある。
弓と禅禅とオートバイ修理技術〈上〉 (ハヤカワ文庫NF)はこれら綜合的な感覚を呼び起こしてくれる入門として良い本だ。



住む人が住む町や家に、能動的なかかわり合う(コミットメント)ことで相互に浸透し合う様を明らかにするようにパタンランゲージとして記述し、パタンランゲージを使用する事で、それらを実際に生成しようとしているのだろう。