再読:知覚の哲学

知覚の哲学: ラジオ講演1948年 (ちくま学芸文庫)

知覚の哲学: ラジオ講演1948年 (ちくま学芸文庫)

お気に入りの本。再読した。この系で語られる対象への接近の仕方は、ふりかえりやスクラムやTDDを通じての対象の捉え方・かかわり合いを深く理解する上で、大変勉強になる。前回書いた「TDD の素振りをしよう - haru01のめも」の記事を書く際、私に影響を与えた本の1つになる。ふりかえりやスクラムやTDDでなくても、私の日常を過ごし方についてヒントをくれる。個人の趣味にカメラがあるが、私が被写体と向き合いシャッターを押す瞬間、この本にかなり影響を受けていると思う。

先にデカルトの「方法序説 (岩波文庫)」を読んでおくと理解がはかどると思う。デカルトの考え方の問題点を指摘し、乗り越えようとしている。野中先生が触れる、間主観、相互主観に興味・関心があるならオススメの本。ただ、先にあいだ (ちくま学芸文庫)の方を読んだ方がわかりやすいかもしれない。

3章でゲーテの解説があるのはうれしい。他の本でゲーテの世界の捉え方が理解できなくて詰まっていたのが、この本でいくらか解消された。

4章は、例えるなら、マトリックスのレッドピルを飲む話、ガンダムニュータイプに目覚める話に似ている。ただし、超能力や霊的な力を持つというよりは、今までの考え方を脇に置いて、ありのままを見て、ありのままを聴き、私と周りの関わり合いを改めて問い直している。その際に身体が重要な役割を果たす。普段何気なく/あまり意識せずに使っている考え方や感じ方や行動指針を俎上に載せ、改めて学び直すことについての訓練にこの章は役立つ。哲学分野の本を少し齧っているが、レッドピルを飲む系は何度か遭遇している。

哲学でたびたび取り上げられる他者問題は5章に出てくる。ソフトウェアのコンテキストで語るなら「他者(ユーザー、プログラマー、PO、アナリスト、未来の自分、etc...)が困っていること/うれしいことを私が理解するってどういうことなのだろうか?どうやって理解できるのだろうか?」のテーマに興味があるなら5章をオススメ。普通の問いながら実に奥深い。
だだ、先にペアプロスクラムやTDDやデザイン思考のワークショップなどを学んだ後で、その裏にある何かを知りたい/感じたいと思ったときに読むのがベターかもしれない。

6章は、映画や詩などの芸術について少し語られている。この章は私にとって、モデラーとして対象ドメインとの関わり合いについて多くの示唆を与えてくれる。「モデラーは対象ドメインを外側から眺めて記述する存在である」に疑問を持ったことがあれば、6章はオススメだ。